田伝むしの農作業

農薬不使用ササニシキができるまで【育苗】

田伝むしでは、4月上旬から5月20日頃までの約40日間がハウスの中で稲の苗を育てる育苗(いくびょう)の期間です。

「苗半作」という言葉があり、苗作りでその年のお米作りの半分が決まってしまうというくらい大事な時期と言えます。
農家さんによっては「苗八作だ」という人もあり、それぐらい苗の良し悪しがお米作りを左右するということですね。

11125088_447926078700456_8972511330208584818_o 田伝むしでも農薬不使用で健康な苗に育つ工夫をしており、特に冷害に弱いササニシキなのでこの育苗の時期から冷害対策が始まっています。特に意識していることは「加温しないこと」と「根張りを良くすること」です。

気温が高いと稲はぐんぐん葉っぱを伸ばして成長します。一見良いことのように見えますが、ひょろっと細長く根張りが良くない苗になってしまいます。目指す苗の姿は、背丈は高くないけれど茎が太く、そして根が多く長い苗です。
ハウスの中で育苗するので外よりは気温が高くなってしまうのですが、早い段階でハウスの扉を開けて涼しい外気が入るようにします。そうすることで目に見える葉の成長が遅くても、根をしっかりと張るので自分で栄養や水を吸収する力を持ったたくましい苗になります。

また、根張りをさらに良くするため、葉が2枚ほどになった頃からトンボで稲をなでたり、重いローラーを引っ張って歩いたりします。葉っぱに刺激を与えることでエチレンという植物ホルモンの分泌が促され、エチレンの働きにより根の成長が盛んになると言われているからです。

根は植物の体を支え、水や栄養を吸収する器官です。
その根がしっかりしてこそ田んぼに移ってからの根付きが良く、自ら栄養を求め、倒れにくくなります。根を意識することが農薬・化学肥料不使用でも病気や害虫や暑さ寒さに対応できる稲になることにつながる大事なポイントです。

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平らな地面にビニールシートを敷き、そのシートの上に苗箱を並べ、稲の葉が2枚ほどになったらシートに水を溜めてプール状態にするのでこんな名前が付いています。水を張ったプール状態にすると病気の原因となる細菌の増殖を抑制でき、農薬不使用でも病気発生のリスクを減らせるのです。
また、育苗中にはばか苗病やいもち病という病気になる可能性もありますが、以前紹介した【温湯種子消毒】によってそれらの病原菌も減らしています。

水を張ってプールとなったハウスの中ではカエルの大合唱が聞こえ、季節の変化とともに卵やオタマジャクシが見られます。稲の葉が4~5枚となる5月20日頃からいよいよ田植えの始まりです。

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2017-01-17 | Posted in 田伝むしの農作業No Comments » 

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